アルゼンチン

2 章 投資環境

    • GDPとGDP成長率

       ■ GDPとGDP成長率
      2003年頃から数パーセントの高成長を遂げており、2009年には世界金融危機の影響を受け落ち込んだものの、翌年にはV時回復しています。2012年は、ブラジル経済の影響が強いアルゼンチンはGDP成長率1.9%と低調に終わりました。
       
    • 財政と対外債務

       ■ 財政と対外債務
      南アメリカ経済には、財政赤字、ハイパーインフレ、過剰な対外債務といったイメージがつきまといます。1980年代から1990年代には多くの国がそういった状況に陥っていましたが、その後の、経済開放政策と適切な財政運営によって、多くの国が21世紀には安定した経済基盤を手に入れているのが現状です。
       
       
    • 貿易

       ■ 貿易
      貿易の自由化に積極的で、この10年間に貿易額を数倍に伸ばしています。輸出入ともに 2009年は世界金融危機の影響を受けて後退しましたが、その翌年には大きく回復しています。アルゼンチンは常に輸出が輸入を上回っており、貿易収支は 黒字が続いています。
       
       
      [ 品目別輸出 ]
      アルゼンチンは鉱物品等の輸出が少なく、牛肉や大豆などの 農産品の比率が輸出額の59.4%、工業品の比率が34.2%を占めています。
       
       
      [ 国・地域別輸出 ] 
      アルゼンチンに至っての対米輸出率は約5%にすぎません。一方で、アルゼンチンはメルコスールの域内輸出が約30%にも上り、中でもブラジルへの輸出が約20%と多いです。
       
       
      [ 国・地域別輸入 ]
      総輸入額に占 める割合は、アルゼンチンは EU各国から輸入割合が10 ~ 18%程を占め、中国、日本、韓国の3 カ国からの輸入割合が約20 ~ 25%となっています。アメリカから の輸入割合はアル ゼンチンが約10%です。 一方、ブラジルからの輸入割合は、アルゼンチンが約 26.3%にもなります。
       
       
       
    • 産業別動向

      ■ 産業別動向 
       
      [ 農林水産業 ] 
      アルゼンチンのGDP構成における農・林・畜産・漁業の占める割合は全体の一割以下と目立たないものの、同国は世界有数の農業国です。パンパと呼ばれる肥沃な草原地帯がラ・プラタ川流域に広がり、 湿潤パンパではトウモロコシ栽培や牛の放牧、乾燥パンパでは羊の放 牧、中間地域では小麦栽培が行われています。土地の肥沃さとともに同国の食物増産に拍車を掛けたのが、遺伝子組換作物(GMO)の導入です。大豆、トウモロコシなど飼料にもなる穀物や、綿花などで、モンサント社の開発種など複数のGMO種が認可され、使用割合は既 に90%超の水準になっています。
       
      [ 製造業 ]
      アルゼンチンのGDP構成で強いインパクトを与えるのが、全GDP の約20%を占める製造業です。自動車関連の本体や部品の製造が盛んで、本体生産はゼネラル・モーターズ、フォード・モー ター、プジョー、フォルクスワーゲン等の外資企業が中心に行っています。これらの完成車等の一部はブラジルなどの近隣諸国に輸出されますが、主には内需向けの生産となっています。
       
       
    • 直接金融

      ■ 直接金融(株式)市場・為替
       [ 証券取引所 ]  
      アルゼンチンは国を代表する証券取引所を、政府機能の所在地である首都において開設しています。アルゼンチンのブエノスアイレス証券取引所(BCBA)は1854年開設で、2012年末で107社が上場しています。しかし、同年の取 引価額が22億USドル、時価総額が343億USドルと小ぶりな印象が 否めません。
       
      [ 通貨 ] 
      通貨、アルゼンチンペソは「ペソ」(頭に国名を付けて呼ぶ)となります。アルゼンチンペソは、21世紀初頭の世界経済危機を引き起 こした要因となったことで知られています。90年代末に世界を席巻した通貨危機において隣国ブラジルがUSドルとのペッグ制をいち早く解消して通貨切り下げを行ったのに対し、アルゼンチンは決断が遅れたために経済危機を引き起こし、国の輸出力が大きく低迷しまし た。 
       
       
    • 外国直接投資

       ■ 外国直接投資(FDI)額 
      [ 業種別外国投資受入額 ]
       FDIについては、額だけでなく投資先の業種を見ることで、雇用など国内経済にどれだけ影響を及ぼしているかがわかるといわれます。アルゼンチンへのFDIは、製造業向けが比較的大きな割合を 占めているため、雇用の他、国内の裾野産業への経済波及効果も見込 めます。
       
      [ 国・地域別外国投資受入額 ]
       FDIを投資国・地域別に見ると、投資実施国が世界に広く分散して いることがわかります。特にチリは環太平洋パートナーシップ(TPP) の原始加盟国であり、その他アメリカ、カナダ、メキシコ、EU、中 国、韓国等とも自由貿易協定(FTA)を結んでいます。これにより世 界のどの地域とも資本や財の移動を容易に行えるのです。 
       
       
    • インフラ

       ■ インフラ状況 
      世界経済フォーラムが行う、インフラ等の世界競争力を調査する「国際競争力レポート(Global Competitiveness Report)2013‐2014」によると、アルゼンチンは同104位となっています。
      道路 
      アルゼンチンでは自動車がほぼ独占的な交通輸送機関となっている。道路整備は国内外の連携の下、広範に行われている 
       
      鉄道 
      国土が広大なアルゼンチン、では一時期栄華を誇った鉄道 輸送も、今では空運や海運に押され、一部の大都市近郊路線を除いて 衰退傾向にある
       
      港湾 
      アルゼンチンは首都のブエノスアイレス港が依然として国内最大級の港であります。
       
      空港 
      アルゼンチンのエセイサ国際空港は主要な空港であり、エルドラド国際空港はア ビアンカ航空の、アルトゥーロ・メリノ・ベニテス国際空港はラン航 空のハブ空港となっている
       
      [ 交通インフラ ] 
      南米諸国におけるインフラレベルはそこまで高くなく、特に交通インフラについては、国際競争力レポートの調査対象の他の地域の国から大きく出遅れている印象があります。そのため中南米各国では、企業間の国際競争力を維持するために、物流を効率化させる交通関連の インフラを充実させる取組を行っています。
      【物流コスト対 GDP 比率】アルゼンチンの物流コスト対 GDP 比率は27.0です。
       
      南米市場の実態
      ■ 各国市場概況 
      [ アルゼンチン ] 
      アルゼンチン市場の強みとして、所得水準の向上、サプライチェー ンの簡素化、治安の改善など、ビジネス環境の整備が進んでいる点などが挙げられます。一方で、脆弱な交通などの基礎インフラに難がある点や、内需向け生産、低いGDP成長率などが弱みとして投資の懸念事項となっています。 今後、留意すべき点としては、国際金融公社(IFC)の評価、ソブリン債の格付けが軒並み低調であり依然として経済が不安定な状態が 続いていることが挙げられます。
       
      日本企業の進出動向
      アルゼンチンの日本企業の進出動向 をみると、2013年末の段階において、アルゼンチン51 社(これらの数字は日本企業による投資であり、現地在住の日本人が設立した法人は含まない)であり、同年における日本からの直接投資額は、アルゼンチンは5億300万USドルとなっています。 
       
    • ビジネス環境の現状2015

      ■ ビジネス環境の現状2015
      世界銀行と国際金融公社(IFC)が、「ビジネス環境の現状2015」 を共同で発表しており、このアンケートからコロンビアへの評価をみることができます。アルゼンチンは総合124位と大きく出遅れています。隣国ブラジルが同じ調査で総合116位ですので、既得権益層の主張が強い保護主義的な経済社会で、小回りの利いた改革が行き届いていない といえます。