ラオス

1 章 基礎知識

    • 基礎知識

      ■ 正式国名 ➡ ラオス人民民主共和国
      英語名:Lao Peopleʼs Democratic Republic 
      ラオス語名:
      (Sathalanalat Paxathipatai Paxaxon Lao / サーターラナラット・ パサーティパタイ・パサーソン・ラオ)

      ■ 国旗
      ラオスの国旗は、横に赤・青・赤、中央に白丸を配しています。赤は「社会主義革命とそのために流された血」、青は「国の豊かさ」、白丸は「メコン川を昇る月」を表しており、共産主義による国の統一を表現しています。

      ■ 面積・国士 ➡ 23万6,800㎢(日本の本州の大きさ)
      ラオスは、東南アジアでは唯一海に面していない内陸国であり、四方の国境は中国、タイ、ベトナム、カンボジア、ミャンマーに囲まれています。
      南北に 1,0 0 0 ㎢に及ぶ帯状の国土は、1 7 の行政区分に分けられます。国土の 7 0% は山岳地帯であるため、交易や交通網の発達という面で、他国に後塵を拝してきた歴史がありますが、現在は渓谷を利用して水力発電を行っており、重要な外貨獲得源となっています。


      ■ 首都 ➡ ビエンチャン/英語名:Vientiane
      ビエンチャンは、16世紀中ごろにメコン川沿いに建都された都市で、それ以来ラオスの政治・経済の中心地として発展してきました。ビエンチャンの人口は約 81万人で、3,9 2 0 ㎢(東京都の約 2 倍)の土地に、ラオス総人口の約12%が暮らしています。
      ビエンチャンという名称の由来は、紫壇(チャン)の木をシンボルとした城市(ビエン)という説や、初代統治者のブーリチャンが変化し、ビエンチャンとなったという説など諸説あります。

      ■ 年号 ➡ 仏暦
      仏暦を使用しており、西暦に543 年を加えると仏暦になります(仏暦2558年=西暦2015年=平成27年)。
      仏歴は釈迦の入滅を基準としており、タイやカンボジアにおいても使われ、ミャンマーやスリランカで使われる仏暦と1年のズレがあります(ラオスの仏暦2558年=ミャンマーの仏暦2559年=西暦2015年)。

      ■ 気候 ➡ 熱帯モンスーン気候
      ラオスは全国的に熱帯モンスーン気候です。暑季(2 ~ 4 月)、雨季(5~ 9 月)、乾季(1 0~1 月)の 3 シーズンに大きく分かれます。全国の年間平均気温 2 8℃程度で、最高気温は 3 ~ 4 月にかけて高く、ビエンチャンでは36℃程度になります。ビエンチャンの最低気温は、16℃前後まで下がり、12月が最も寒くなります。


      ■ 時差 ➡ ー2時間
      日本との時差は -2 時間(UTC:+7:0 0)で、日本の正午がラオスの午前10時です。なお、サマータイムは導入されておりません。

      ■ 人口 ➡ 約690万人
      国連人口基金(UNFPA)が発表した「世界人口白書 2 0 1 4」によると、ラオスの総人口は約 6 90万人となっています。ラオスは 5 0 以上の民族がいる多民族国家であり、居住地の標高により大きく 3つに大別されます。最も多いのが、人口の56%を占める低地ラオ族(ラ オ・ルーム)、次いで  34%を占める丘陵地ラオ族(ラオ・トゥン)、そして9%を占める高地ラオ族(ラオ・スーン)となっています。

      ■ 言語 ➡ ラオス語
      ラオスの公用語はラオス語です。タイ語やカンボジア語と語源が同じであるため、タイ東北部ではラオス語と酷似した方言が使われています。なお、1960年の文字改革により文字数が整理されました。
      ラオスでは、タイのテレビ番組が放送されているため、ラオス人のほとんどがタイ語を理解できます。また、かつての植民地時代の名残で、高年齢者層は、フランス語を理解できる人も多いようです。近年は、国際化の流れに対応するために英語を学習する若者が増えているといわれています。

      ■ 通貨 ➡ キープ
      通貨はキープ(Kip)が用いられます。紙幣は 1 3 種類ありますが、インフレが進んだため、現在は 5 0 0 キープ札以上が主に用いられています。硬貨は現在発行されていません。2 0 1 5 年 7月 11 日現在、1 円= 66.1406 キープです。キープは、アジア通貨危機の影響もあり、1996 年からの 10 年間のうちに対USドル比で14.6倍にまで下落しましたが、2011年ごろにはやや改善されました。その後2015年現在までは大きな価格変動もなく推移しています。

      ■ 宗教 ➡ 上座部仏教など
      ラオスは、人口の 6 0% 以上が上座部仏教(小乗仏教)を信仰している仏教国です。仏教徒は低地ラオ族及び高地ラオ族の一部で構成されています。その他の宗教は丘陵地ラオ族の多くが信仰する精霊信仰(アニミズム)が人口比30%以上、あとはキリスト教徒やイスラム教を含む少数派があります。
      アニミズムの信者は、仏教の教えも同時に信仰しているケースもあり、それらも含めると人口の 9 割が仏教の影響を受けているといえます。憲法上は信仰の自由を保障していますが、国民のほとんどが仏教徒であるため、仏教は実質上の国教です。
      日本と同じ仏教であるとはいっても、日本は厳格な戒律にとらわれず大衆の救済を目指す大乗仏教であるのに対し、ラオスでは厳しい修行を経た者だけが救済されるという上座部仏教であるという点で、その性格は異なっています。ラオスの僧は厳しい戒律を課され、晩御飯は口にせず、結婚も許されないばかりか、女性に触れることも禁じられています。

      ■ ラオスの主な歴史
      ラオスの基礎は 14世紀のラーサーン王国時代に築かれ、その歴史上で最も栄えたのは、16世紀のスリニャウォンサー王時代といわれています。
      ラーサーン王国はラオ族による統一王朝で、勢力を拡大させましたが、18世紀に3つに分裂し(ビエンチャン王国、ルアンパバーン王国、チャンパーサック王国)、タイやカンボジアの影響下に置かれました。
      その後、19世紀末にフランスの保護国となり、フランス領インドシナの一部となりました。しかし、第二次世界大戦中に、フランス領インドシナが日本に占領されたことから、1 9 4 5 年 4 月 8 日にラオスはフランスから独立しました。第二次大戦後フランス領に再び編入され、1953 年10月22 日に完全独立を達成しました。


      ■ 政治体制 ➡ 人民民主共和国
      [ 行政組織 ]
      現在のラオスの元首は、チュンマリー・サイニャソーン国家主席であり、同時にラオス人民革命党書記長を兼任しています。大統領の選出には、国民議会の出席議員の 3 分の 2 以上の賛成が必要であり、任期は5 年です。
      1 9 9 1 年制定の憲法により、国家機構が立法部・行政部・司法部に分かれましたが、ラオス人民革命党による独裁が明記されたため、以前の体制が残ったままです。首相、閣僚や知事の任命は大統領が行うことになっていますが、ここでもラオス人民革命党員がすべてのポ ストを占めています。
      このように、国家政策や行政に大きな影響を及ぼすラオス人民革命党は、5年に一度党大会を開催し、次の 5 年間の政策や人事について決定します。
      ラオスには、1 7の県(クウェー ン ) と、特 別 市、 特 別 区 の 計18 の県レベルの地方行政があり、県 には 1 4 1 の郡(ムアン )、郡には 1 0,5 7 4 の村(バーン)が存在し、 地方行政も国や党が支配していま す。


      [ 国会 ]
      一院制の国民議会が立法機関として設置されています。国民議会の 定員は 132 名で任期は 5 年です。1975 年に社会主義政権が誕生して 以降、7 回の選挙が行われましたが、ラオス人民革命党の党員がほぼ すべての議席を占める結果となっています。
      選挙は、単記非移譲式投票(1つの選挙区で複数の当選枠があり、有権者は 1 人の候補者にのみ票を投じて、上位から当選者が決まる投票方式)で行われ、全国17の選挙区に分かれて、各選挙区において3名から 14 名の定員を選出します。
      直近に行われた 2 0 1 1 年 4 月 3 0 日の国民議会選挙では、人民革命党が 128 議席、その他が 4 議席をそれぞれ獲得しました。

      ■ 教育制度
      ラオスの教育制度は、初等教育が 5 年、前期中等教育が 4 年、後期中等教育が 3 年、高等教育が 2 ~ 7 年、その後大学などが設置されており、初等教育から大学まで制服を着用することになっています。なお、初等教育の 5 年間が義務教育です。
      大学への進学率は 1 7. 6  9% 程度(2013年時点)、識字率は 72.7%(男性 82.5%、女性63.2%、2005年)であり、教育水準の向上が課題となっています。

      ■ 政治・経済動向
      ラオスでは人民革命党による一党独裁政治が行われており、長期に渡り安定しています。
      2 0 1 1 年 4 月に 5 年に一度の国民議会選挙が行われましたが、一党独裁の下での選挙のため、実質的には信任投票の様相を呈しており、132 議席のうち128議席をラオス人民革命党(Lao People's Revolutionary Party)が独占しました。
      経済面では、 2013年の1 人当たり国内総生産(GDP)が1,400USドルとASEAN最低レベルであり、政府は2 0 2 0 年までに後発開発途上国(LDC)と呼ばれる世界最貧国リストからの脱却を目標として掲げています。一方でその成長率は8%と著しい成長を見せています。その背景としてはタイの人件費高騰や洪水などにより、企業の生産拠点がラオスに移るなど「タイ・プラス・ワン」としてにわかに注目を浴びているという点が挙げられます。

      大きな資本を持たない同国にとっては、外国資本をいかに呼び込むかが、経済発展のカギとなります。2 0 1 1 年 1 0 月には、他国とは一線を画す特別経済区を建設することを発表し、具体的にはカジノ施設の併設など、観光業や製造業の誘致拡大に向けた独自の発想を見せており、今後の展開に注目が集まります。

      ■ 日・ラオス関係
      日本はラオスに対し2013 年度には、有償・無償・技術協力合わせて約243億円の援助を行っています。
      日本とラオスの関係は、1 9 8 6 年のラオス党大会での改革路線採択後から活発な交流が行われるようになり、1 9 8 9 年カイソン首相(当時)の来日、1 9 9 9 年秋篠宮同妃両殿下のラオスご訪問、翌 2 0 0 0 年には小渕首相(当時)がラオスを訪問するなど、首脳陣の往来が頻繁 に行われ、友好的関係が築かれてきました。
      2015年は日本とラオスの外交関係60周年の節目の年です。3月にはトンシン首相が来日し日ラオス首脳会談が行われ、経済協力、政治・安全保障、貿易、投資など幅広く議論が交わされました。また二国間の関係を「包括的パートナーシップ」から新たに「戦略的パートナーシップ」として強化していくことに合意しています。
      貿易面では、日本からラオスへの輸出額は1億3831万ドル、輸入額は1億1656万ドルです(2014 年)。日本からの主な輸出品は、車両、建設機械等であり、ラオスからは衣類やコーヒーなどを主に輸入しています。

      ■ 在留邦人
      日系進出企業数の増加に伴い、海外在留邦人総計(平成27年要約版) によると 677名の邦人が在留しています。