フィリピン

2 章 投資環境

    • 経済動向

      フィリピンは、BRICS(Brazil、Russia、India、China、South Africa)に続く、ネクスト 11※の一角に位置付けられています。 外国企業がフィリピンに興味を持つ理由はいくつかあり、特に欧米企業にとって大きなメリットは英語力が高いことです。また、中国等 に比べて安価で豊富な労働力も魅力の一つです。
      加えて豊富な外貨準備高と健全な国際収支も、大きな強みとなって います。国際格付け会社のフィッチ・レーティングスの 2011年 11月調査によると、フィリピンが世界的な金融不安の深刻な影響を受ける可能性は低く、インドネシア、マレーシア等に比べると、中国と並んで資金調達及び流動性の比率が高いと判断されています。
      ※  イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、バン グラデシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコの11カ国

      フィリピン中央銀行(BSP:Bangko Sentral ng Pilipinas)の発 表では、2 0 1 1 年末時点での外貨準備高は約 7 5 1 億USドル(約 5 兆 8,0 0 0 億円)となっております。2011年 8月まで 17 カ月連続で過 去最高を更新し、9 月、12月は前月比で減少しましたが、比較的順 調な増加傾向を示しています。また、2011年 10月には、国際収支 額は 2 億 8 0 0 万USドルの黒字となり、年初からの累計黒字額は前年 同期比 8% 増の 99 億 2,900 万USドルと今年通年の予測(67 億USド ル)を上回っていることから、中銀は黒字額の見通しを上方修正する方針を示しています。
       
      2000年代に入って以降のフィリピン経済は他のASEAN諸国と同 じく右肩上がりを続け、基本的に底堅い動きをしています。にもかかわらず、他の周辺諸国の驚異的な成長により、フィリピンはその存在感を示すことができていませんでした。
      最近は、中国、タイ、ベトナム等で人件費を含む各種コストが高ま りつつあることを背景に、豊かな労働力を持ち、英語力の高いフィリ ピンが、投資先として再び注目を集め始めています。
       
      ■ 経済成長率の推移
      フィリピン経済は、2002年以降 4% 以上の経済成長を記録し、 2007年の実質GDP成長率は 7.1% と、過去 31年間で最高の成長率 を記録しました。金融危機の影響により 2008年の成長率は 3.7%、 2009年は 1.1% に留まりましたが、基本的には安定して上昇を続け ています。
       
      2009年第4四半期以降はV字回復に転じ、2010年の実質GDP成長率は7.6%を記録しました。2011年には、年平均3.7%まで落ち込みましたが、現在は回復傾向にあります。
       
      ■ インフレ
      2007年のインフレ率は3.9%と低水準でしたが、2008年に入り、世界的な原油・食料価格の高騰を受け、インフレが急進し、最終的に7.9%を記録しました。2009年は4.3%と一定の落ち着きを見せ、2010年は3.6%でした。
       
      ■ 国家財政の推移
      アロヨ前政権は、財政改革を最重要課題として、税制改革、徴税強 化等の歳入改善策、予算執行の厳格化等歳出抑制策に努めた結果、財 政赤字は 2005 ~ 2007 年の間で大幅に減少しました。しかし原油・食料価格の高騰、金融危機の影響を受けて、財政赤 字は年々増加しており、2008 年は 681 億ペソとなり、その後 2009年に 2,990 億ペソ、2010 年 3,145 億ペソとなっています。 財政が悪化した主な原因としては、歳入面の脆弱さがあり、徴税能力の弱さに起因しています。アキノ大統領は、財政再建を目指してい ますが、増税を行うのではなく、徴税強化により税収アップを目指し ています。この方針の副作用として、税務当局によって企業が不当に 徴税される等トラブルが頻発しました。増税せずに財政赤字を解消す ることの困難が、フィリピン財政の大きな問題となっています。
       
       
      ■ 経常収支
      フィリピン経済を支える大きな柱の一つが、海外労働者からの送金 による経常移転収支の黒字です。海外労働者は約 8 1 9 万人で、うち 米国が約 2 8 4 万人、中東諸国が約 2 2 6 万人です。フィリピン人は総じて英語力が高いため、優秀な人材が欧米に渡りやすい傾向があります。
      一方、貿易収支はほぼ赤字となっています。輸出はエレクトロニク スを牽引役に大きく拡大してきましたが、工業基盤が脆弱なことから中間材、資本財の輸入依存度が高く、他国と比べて貿易黒字化が困難な状態です。
       経常収支全体では黒字となっていますが、これは貿易赤字を大きく上回る海外からの送金に支えられた経常移転黒字によるものです。こ のような経常収支構造はASEAN諸国では異例であり、メキシコなどと似た構造となっています。
       

      外貨獲得の手段である海外労働者からの送金は、近年、労働者数の増加、専門職や技術者の増加による賃金水準の上昇から、前年比 1 0% 以上の伸びを示しています。金融危機の影響を受け、2008年 は 1 6 4 億USドル、2009年は 1 7 4 億USドルと微増にとどまりまし たが、2010年は送金総額の約 4 割を占める米国からの送金が堅調に推移しました。また、中東等における送金ネットワークの充実などに より、送金総額は 187.6 億USドルと過去最高を記録しました。
      フィリピン人労働者が最も多い国は米国であり、送金総額の 3 0 ~ 4 0% は米国からの送金が占めています。次のグラフは、OFWからの 送金額の推移です。OFWとはOverseas Filipino Workersの略であ り、海外で出稼ぎするフィリピン人労働者を意味します。
       
       
       
       
       
    • 貿易

      フィリピン経済における最も大きな問題の一つは財政赤字ですが、その主な原因は貿易赤字です。貿易収支に関しては、2010年度第3四半期に、輸出額(8,588億ペソ)が輸入額(8,248億ペソ)を一時的に上回り、貿易黒字を記録しましたが、同年第4四半期には再び赤字に転じました。2012年第1四半期現在は輸出の増加により、多少の改善が見られます。
      貿易においてもフィリピンにとって、日本は非常に大きな存在となっています。これまで日本は米国に次ぐ輸出相手国でしたが、2010年には輸出相手国及び輸入国の両方において第1位となり、今後更なる貿易の増加が期待されています。
       
      ■ 輸出
      [国別の輸出]
      2010年のフィリピン経済は内需と輸出の両輪に支えられ、年間を通じて好調でした。過去最高額を更新した海外就労者からの送金が家計マインドを改善させ、GDPの約8割を占める民間消費の拡大に寄与しました。更に、2009年に大きく落ち込んだ輸出が、アジア域内での需要増を追い風に急回復し、財・サービス輸出は21%増となりました。前述の通り、フィリピンの最大の輸出相手国は日本です。2010年の国別輸出統計では、日本が78億USドルで構成比率1 5%を占めました。次いで米国が74億USドル(14.6%)、EUが74億USドル(14.4%)の順になっています。
      [品目別の輸出]
      1990年以降、治安回復や投資環境改善によって外資系企業の進出が増えました。そのほとんどがエレクトロニクス製品の生産拠点として進出したため、エレクトロニクス産業を中心とする輸出部門がフィ リピン経済を支えることになりました。1999年には総輸出の 70% 以上をエレクロニクス製品が占めていましたが、2001年のITバ ブル崩壊及び 2009 年のリーマン・ショックの影響により、輸出が最盛期の4割以上も減少しています。
      4割以上減少したにもかかわらず、フィリピンの品目別統計額を見 ると、エレクトロニクス製品の輸出は依然として圧倒的に高い割合を 占めます。2010年度には310億USドルと、それに次ぐ衣料品・ア クセサリーの17億USドルを大きく引き離しています。
      2010年の対日輸出では、機械部品を中心に特殊品目が伸び、前年比45.3% 増の 18 億 1,600万USドルとなりました。電気機器・部品 は、集積回路が伸びなかったものの、ワイヤーハーネスが増加し、全 体では 18.1% 増の 17 億 700 万USドルとなりました。
       
      ■ 輸入
      [国別の輸入]
      国別輸入額の統計によると、米国と日本が大きなシェアを占めており、シンガポール、中国と続いています。2010年度の上位1位は日本の67億USドル、2位は米国の58億USドル、3位はシンガポールの51億USドルとなっています。
      [品目別の輸入]
      輸入品目においても輸出品目と同じく、エレクトロニクス製品が大きな割合を占めています。エレクトロニクス製品の部品を輸入し加工したものを輸出するため、輸出に伴って輸入の割合が大きくなっています。
       
    • アンケートから見る投資環境

      ■ ビジネス環境の現状2015
      世界銀行グループの国際金融公社(IFC:International FinanceCorporation)において、189カ国を対象にビジネスのしやすさをランキングした「Doing Business(ビジネス環境の現状)」が発行されています。
      これによると、「電力調達」では昨年度の57位から54位に順位を上げ、シンガポール、タイに次ぐ高評価となりました。また、「クロスボーダー取引」では、コンテナ貨物の輸出入コストの低さ、所要日数の短さなどの要因により昨年度から順位を3つ上げています。
       
       
       
       
       
    • 金融(株式)市場

      フィリピン証券取引所(PSE:Philippine Stock Exchange, Inc.)は、首都マニラにあるフィリピンで唯一の証券取引所であり、2011年12月時点において 248 社が上場しています。更に、PSEはマニラ首都圏マカティ市にある取引所の地方事務所を セブ市に開設することが発表されています。これは,首都圏に集中し ている投資家以外に、フィリピン第 2 の経済圏を持つセブ地方の小口投資家を狙ったものと見られています。
      2011年 6月にはASEAN4 カ国の証券取引所(マレーシア証券取引所、フィリピン証券取引所、シンガポール証券取引所、タイ証券取引所)がオンラインで結ばれ、国家間のクロスボーダーのオーダー・ルーティングやトレーディングがネット上で可能となりました。これにより、投資家や取引所会員各社は単一の接続で、ASEAN市場にアク セスすることができるようになり、今後はPSEの一層の活性化が期 待されます。
      しかし、フィリピンでは株式市場を通じたガバナンスが有効に機能していないこと、また、企業の情報開示も十分ではなく、一般株主が企業業績を正確に把握することが困難であることから、株式市場の投資家が企業経営に関与しようとする意識が低いとの指摘がありまし た。また、PSE年報及び市況報告書によると、IPO発行実績が年平均 2 ~ 4 件と取引規模が小さいのが現状であり、国内資本の大手企業においても未上場企業が多数です。
      今後、企業が効率的な資金調達を行えるよう、企業の情報開示を一層進め、一般投資家の保護を強化するなど、資本市場の更なる整備が求められています。
      下記のグラフは、フィリピン総合指数(PCOMP)の推移であり、 株価の時価総額を加重平均で示されたものとなっています。フィリピン証券取引所に上場された商工業、不動産、鉱業、石油部 門の銘柄で構成され、1 9 9 4 年 9 月 3 0 日を基準日とし、新規上場または上場廃止のつど新しく算出されています。2008年 9 月のリーマン・ショックの影響を受け大きな下落はあっ たものの、後に順調に回復・成長傾向を持続しています。
       
       
       
    • 為替レート

      フィリピンの為替管理制度としては、フィリピン中央銀行(BSP)が管轄官庁となっており、完全変動相場制を採用しています。ただし、USドルとは相場連動(ペッグ)していません。また、海外から投資しペソに交換した場合には、中央銀行へ届出が必要となります。
       

       
      2010年11月には株価は過去最高値を更新し、経済危機以降の株価の上昇ペースでは、インドネシア・タイに次ぐ高水準にあります。しかし、株高については、今日の世界的な新興国に対する投資ブームの影響がフィリピンの株価を押し上げていると考えられています。
       
    • 外国直接投資(FDI)

      2010年のフィリピン国家統計局(NSCB:National StatisticalCoordination Board)によると、外国からの直接投資は1,961億ペソであり、このうち日本は583億ペソ(29.8%)で第1位、次いで2位はオランダの368億ペソ(18.8%)、3位は韓国の312億ペソ(15.9%)となっています。
       

       
      国連貿易開発会議(UNCTAD)の世界投資報告書 2015年版によると、2014年の世界全体での外資直接投資(FDI)流入額は前年比 8%減の1兆 26億USドルと減少しました。新興国への流入額は同 12.3% 増の7,000億USドルと 2桁増加となり、特に、東南アジ アへの流入額は同109.1% 増(約2倍)の492億USドルへと急回復しました。
      一方、フィリピンへの流入額は同166%増の62USドルとなっています。これまで FDIが他のASEAN諸国に比べて低い水準に留まっている主な理由としては、「不安定な政治」、「不十分なインフラ」、「外国企業への参入障壁」などがあげられます。
       
      .
       
       
      ■ 国別外国投資受入額
      フィリピンは、自動車や電子部品等の業種を中心にグローバル輸出拠点として外資系企業の進出が増加した背景があります。
      また、2014年に入り、フィリピンへの外国直接投資(認可ベース)はであり、上半期では前年同期比 2.5倍と好調でした。このうち日本は47億8000万ドル(29.8%)と他国を大きく引き離して首位となっており、2位はオランダの368億ペソ(18.8%)、3位 は韓国の312億ペソ(15.9%)となっています。日系企業の主要進出企業は、自動車・電子機器・機械等、中国一極集中の懸念から周辺のASEAN諸国へと展開が図られたことが要因だと考えられます。
      アキノ政権では民間資金を導入する官民パートナーシップ(PPP) スキームを推進しており、海外からの大型投資が期待され、今後より 一層のインフラ投資の加速が見込まれます。
       
       
       
    • 日系企業の進出状況

      ■ フィリピンへの日本企業の進出数
      フィリピンに進出している日系企業総数は1,171社にのぼります(2012年5月在フィリピン日本大使館発表)。そのうち938社がフィリピン北部(ルソン地方)に進出しており、全体の80.1%を占めています。
      近年小売業の進出が盛んになっています。無印良品(MUJI)で有名な株式会社良品計画は、2010年の12月に第1号店をオープンしたのを皮切りに、現在では7号店まで開店しています。無印良品のフィリピンでの店舗展開は、地場大手小売グループであるルスタングループ小売会社である「ストアーズ スペシャリスツ社」へのライセンス供与、商品供給という形で展開しており、衣服・生活雑貨・食品販売と幅広く展開しています。
      また、良品計画に続き、ユニクロ(ファーストリテイリング)が、2012年6月15日にフィリピン小売業のリーディングカンパニーであるSMリテールと合弁の形で進出しており、2014年12月末時点で21店舗出店しています。
      2013年からは、村 田製作所が、チップ積層セラミックコンデンサの生産を開始 し、キヤノンはレーザープリンター及び付属品部品の 生産を開始、ブラザー工業はインクジェットプリンター部品などの生 産を開始しています。また、小売業ではファミリーマートが2013年4月に1号店を開店し、2014年12月末時点で87店舗出店しています。大手の日系メーカーの進出に伴い、それら大手の一 次ベンダー企業の進出も進んでいます。今後も関連日系メーカーの進 出が続いていくと思われます。
       
      ■ フィリピンへの日本企業の投資金額
      フィリピンにとって、日本は最大の投資国です。2013年にフィリピン投資認可機関※が認可した日本からの直接投資は583億ペソとなっており、これは国別の内訳で全体の約3分の1を占めています。
      ※ 投資委員会(BOI)、フィリピン経済区庁( PEZA)、スービック湾首都圏庁(SBMA)、クラーク開発公社(CDC)
       
      業種別(2014年データ) で見てみると、 製造業が総投資額の28% 強を占めています。また、電気・ガスが前年(2 0 13 年)と比べて投 資額の伸び率が約 1200% と急上昇しています。
       
       
      ■ インフラ
      アジア各国がインフラ整備を急務としており、フィリピンもその例に漏れません。しかし、厳しい国家財政事情もあり、なかなか計画通りに進められていないのが現状です。フィリピンのビジネスリスクの一つとして多くの企業があげる点が、電力インフラの未整備です。フィリピンでは電力の需給バランス が整っておらず、電気料金は周辺国のおよそ 2 倍となっています。ま た、電力の供給や質が不安定となっています。従って、精密機器を製造するような工場では、自家発電用のディーゼル発電などの対策が必要となります。それゆえ他国より多くの投資が必要となってしまうこ とになります。前アロヨ政権下では、「フィリピン中期開発計画」の中で 10 大政 策中の 3 つに交通インフラに関する政策があげられていたことから、 以前からインフラの未整備については認識されていたようですが、一 貫性のない政府方針が民間企業の不信を買い、なかなか整備が進んでいませんでした。このため、2010年 6月に就任したアキノ政権では官民パートナーシップ(PPP)によるインフラ整備を打ち出しました。 PPPとは、インフラ整備の運営権を民間企業に入札させ、その民間企業の資金によってインフラ事業を実施していくという手法です。これにより、政府はインフラ整備において財政負担を軽減することができ るというものです。我が国でも積極的にインフラ輸出を官民連携で推進することが課題 となっています。
      フィリピンは島国であることから、海路での運輸が発達しています。古くから貨物の往来も多く、港が整備されています。また、空路についてもマニラ国際空港により東アジアと東南アジアを結ぶ中心と して非常に重要な地域であると考えられます。しかし陸路について は、地方の自治体によるところが大きいため、未整備の部分が多くあ ります。
       
      ■ 人的資源
      フィリピンの人口 は2015年7月で1億001万人(U.S. Census Bureau International Data Base)と,ASEANの中ではインドネシ アに次ぐ規模となっています。また、フィリピンの人口ピラミッド は、1 9 5 0 年当時の日本の人口ピラミッドと同じ形をしており、若年 層の人口が最も多い発展途上国特有の富士山型の典型となっていま す。
      これは今後若い労働力が長期安定的に供給されることを示しており、今後耐久消費財を中心とする内需が一気に高まり、フィリピンという国の競争力になって現れてくることが期待されます。
       
       
      ■ 人の特徴
      フィリピン人は、一般的に大らかな性格の人が多く、明るく、素直だといわれており、ホスピタリティにあふれ、高齢者を敬う暖かい国 民性を持っています。カトリック信者が多く、まじめで誠実な人もい ますが、大らかさが度を過ぎて、勤勉さに欠ける人も少なくありませ ん。また、ルールに無頓着な人も多いです。現地で従業員を雇用する 場合、ルールを守ることを意識付けるため、しっかりとしたマネジメ ントが必要といえます。
      また、あまり知られていませんがフィリピンはインド、アメリカの次に英語の話せる人が多い国です。語学能力に優れ、コールセンタ ーなどのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)も盛んです。マネジメント陣のみでなく、ワーカーとも直接会話ができる点が大きな利点だといえます。

      ■ 賃金コスト
      フィリピンの賃金コストに関して、製造業におけるマネージャー、 エンジニア、作業員を比較すると、主要なアジア圏で中間に位置しています。しかし、他国に比べて作業員レベルまで英語が堪能なことを考えれば、アジア圏の中では比較的リーズナブルな価格で質の高い人材を確保することができる点で優位性があると考えられます。
      フィリピンの賃金水準はベトナム、インドネシアなどを上回りますが、賃金上昇率ではこれらの国を下回ります。2 0 1 5年9月時点のマニラ近郊の最低賃金は481ペソ(非農業)になっています。
       
      ■ 労働力の質と量
      フィリピンには法定最低賃金があり、ワーカー賃金は必ずしも低廉ではなく、タイと同様のレベルです。しかし、エンジニア(たとえばコンピュータ技術者)では、質量ともに豊富で、定着率も高く、賃金も比較的低廉であるという特徴があげられます。
      加えて、前述したように英語でのコミュニケーションが可能な人が多く、技術指導が容易なことは大きなメリットです。他のASEAN諸 国と比べてもビジネスにおいて英語の話せるワーカーが多いのもフィ リピンの比較優位性の一つだといえます。実際、世界の各国がフィリ ピンにコールセンターやコンピュータソフトの開発、BPOで進出し ている理由も、その英語力の高さによるものです。
       
      ■ 地理的な優位性
      日本から最も近い東南アジアの一国であり、フェデラルエクスプレ ス社がハブ空港などを構えていることから、業種によれば地理的優位性を持つものと思われます。
       
      ■ 投資課題
      フィリピンの投資環境の課題をあげるなら、①インフラ整備の遅れ(道路・電力等)、②裾野産業の脆弱さ(低い現地調達率➡生産コスト 高)、③労働争議などです。「世界の工場」 として台頭する中国からの安価な製品の流入が、 ASEAN各国に始まっています。また、ASEAN 域内の日系企業では、 域内の生産拠点を再編・集中しようとする動き、コスト削減のため現地調達率を高めようとする動きがあります。たとえば、タイは自動車(特に1 トントラック)の輸出基地として、自動車部品産業の集積度合いが高まっています。
      今後、ますます国際競争が激しくなる中、外国からの投資を呼び込 み、発展を続けていくためには、投資環境をより整備していくことが課題です。また、気になるフィリピンの治安についてですが、2007 年にマニラ市内中心部のマカティ地区にある日系企業が利用していた高級ホテルにおいて、武装集団が当時のアロヨ大統領の退陣を求める立て籠もり事件が発生しました。しかし、反政府勢力は一般市民に危害を加え ないとの考えを持っているため、無差別に一般市民を巻き込むような テロはあまり考えられません。神経質になりすぎないことが必要です。
      フィリピンでの技術系人材の確保については、文系出身のITエンジニアが多い日本に対して、フィリピンでは理工系大学出身のITエ ンジニアが多いのが特徴です。毎年 30 万人の工学系人材を、26 万人のIT系人材を輩出しています。
      また、アジア圏の中でも特に大学進学率が高く、理工系出身の質の高いITエンジニアが多くいます。人材が豊富なわりに国内産業が発 展途上であることから、先進国の外資系企業で働きたいという意欲のある人材が多いためです。今後フィリピンにおいて技術系人材を確保 するのが難しくなることが考えられ、日系企業の進出が少ない今がチャンスだといえるかもしれません。
       
    • 外資政策の基本3法

      フィリピンでは、さまざまな産業において外国投資家からの投資が歓迎されていますが、国内産業の保護を目的として、特定の業種に対する外国投資には規制があります。事前にこれらについて把握するた めには、どの法律を参照すれば良いのかを知っておく必要がありま す。ここでは、外資政策の基本となる法律と、投資規制、優遇政策との関係を整理します。
      外資政策の基本となる法律は次の3つです。
       
       1987 年 オムニバス投資法
      1987年 オムニバス投資法(The Omnibus Investment Code of1987)は、優遇措置を伴う投資に関する法律です。
       
      1991 年外国投資法
      1991年外国投資法(The Foreign Investment Act of 1991)は、オムニバス投資法に定められていた「優遇措置を伴わない投資」の規定に代わり制定されたもので、優遇措置を伴わない外国投資に関する基本的な法律となっています。
       
      1995 年 特別経済区法
      1995年 特別経済区法(The Special Economic Zone Act of1995)は、輸出加工区及び特別経済区(Special Economic Zones)に関する総括的な法律であり、特区内に進出する企業に対して優遇措置を付与しています。
      優遇措置を受けることができるかどうかは、大きく2つの検討事項があります。一つは業種です。これは❶、❷の法律を基に検討します。もう一つは、地域別での優遇です。これは❸を参照します。
      まず、業種での優遇政策は、「1987年 オムニバス投資法」を参照し、自社が投資しようとするビジネスが優遇を享受できるかどうかを検討します。
      担当政府機関は 投資委員会(BOI:Board of Investments)です。BOIが毎年同法に基づいて、投資優先計画(IPP:InvestmentPriority Plan)を発表しています。このIPPの対象業種に投資する企業には法人税減免などの優遇政策が与えられます。これに該当する場合は、BOIへ投資申請を行うこととなります。
      上記、優遇政策に該当しない場合に残る選択肢は、優遇措置を伴わない外国投資か、投資禁止業種に該当するかの2択です。これを把握するために、「1991年外国投資法」のネガティブリストを参照します。ネガティブリストには、業種ごとに出資比率が決められています。逆に、このネガティブリストに該当しなければ、原則100%の外資投資が認められます。 
      2013年度投資優先計画がアキノ大統領により承認され、投資優先 計画における優先投資分野として以下の業種があげられました。
       
      ・ 農業及び農業ビジネス、漁業
      ・ 創造産業、知的サービス
      ・ 造船
      ・ 大規模集合住宅建設
      ・ 鉄鋼
      ・ エネルギー
      ・ インフラストラクチャー
      ・ 研究開発
      ・ グリーンプロジェクト
      ・ 自動車(電気自動車含む)
      ・ 戦略的プロジェクト
      ・ 病院・医療サービス
      ・ 災害防止、緩和、復旧
       
      なお、2012年から新たに加わった項目に、「鉄鋼」と「病院・医療サービス」があります。2011年からの大きな変更点は、「官民パートナーシップ(PPP)」が独立項目から、「インフラストラクチャー」に含められるようになったこと、観光が削除されたことです。
       
    • 投資規制

      1991年外国投資法(共和国法7042号、1996年改正) に基づいて定期的に更新される「外国投資 ネガティブリスト(ForeignInvestment Negative List)」によって、外国投資規制分野が規定されます。現在のところ、2010年2月5日公布、2010年3月10日発効の第8次 ネガティブリストが最新版となっています。
      1991年外国投資法は、アキノ政権下に制定され、1996年にラモス政権下で改正されました。この法律は、1987年 オムニバス投資法の「奨励措置が適用されない外国投資」を改正したものです。よって、優遇措置に該当しない投資について、国内市場開放を目指したもので、ネガティブリスト以外の業種に対する投資は外資による100%出資が認められます。
       
      ■ 禁止分野
      以下の業種に該当する場合、外国投資家の参入や外国人の就業が認められていません。
       
      ・ レコーディングを除くマスメディア
      ・ 専門職(薬剤師、放射線・レントゲン技師、犯罪捜査、山林管理、弁護士)
      ・ 払込資本金が250万USドル以下の小売業
      ・ 協同組合
      ・ 民間警備保障会社
      ・ 小規模鉱業
      ・ 群島内・領海内・排他的経済海域内の海洋資源の利用、河川・湖・湾・潟での天然資源の小規模利用
      ・ 闘鶏場の所有、運営、経営
      ・ 核兵器の製造、修理、貯蔵、流通
      ・ 生物・化学・放射線兵器の製造、修理、貯蔵、流通
      ・ 爆竹その他花火製品の製造
                     出所:JETRO(『第8次外国投資 ネガティブリスト』より抜粋)
       
      ■ 出資比率による規制
      ネガティブリストでは、業種ごとに外国資本の出資比率上限を定めています。 ネガティブリストは、リストAとリストBに分類されており、リストAは、「憲法及び法律の定めにより投資が規制される分野」、リストBは「安全保障、防衛、公衆衛生及び公序良俗に対する脅威、中小企業の保護を理由に投資が規制される分野」が記載されています。
      リストAは外資出資比率上限が、20%以下、25%以下、30%以下、40%以下、60%以下に分類して規定しています。
       
       
      第10次ネガティブリストの発行により、フィリピン人のみが就業できる専門職は大幅に減少しましたが、これは相手国の該当分野でフィリピン人の就業許可が前提となります。日本においては、例えば外国人が建築、内装設計、不動産サービスを行うことは禁止されていないため、日本人がフィリピンにおいて建築、内装設計、不動産サービスにおいて就業することが可能となります。その際には、専門業種の管轄当局(PRC)に対し、日本で就業可能である旨を証明した上で、特別許可申請をする必要があります。一方、日本の外為法において、農業、水産業に対する投資につき、財務大臣及び主務大臣への事前届出が必要であり、審査の結果、投資内容の変更又は中止の勧告を実施する場合がありますが、明確な外資規制はされておりません。
      ただし、個別法が存在し外国人就業が禁止されている業種において、繰り返しとなりますが、フィリピンにおいて日本人による同様の行為は許可されません。この場合にはその個別の法律の改正を待つ必要があると考えられます。また外国資本による持株比率に関する規制として、第9次ネガティブリストにおいては、貸付会社で49%未満、ファイナンス会社・投資会社で60%未満と設定されていましたが、今回の改定によりこれらの規制が完全に撤廃され、外国資本100%の会社においても上記事業を行うことが可能になりました。
       
      ■ アンチダミー法による規制
      1936年に承認された共和国法(C.A 108:Commonwealth ActNo.108)では、規制業種における、役員の外国人占有比率を、資本規制比率に準じて取扱わなければならない旨が規定されています。 ネガティブリストによって、外国資本の出資比率が規制されている場合には、役員の構成でも外国人比率を規制割合以下にする必要があります。
       
      ■ 資本金規制
      銀行や金融業など、一定の業種は、最低資本金の規制が定められています。
       
      [銀行]
      ・ ユニバーサルバンク:54億ペソ
      ・ 商業銀行:28億ペソ
      ・ 貯蓄銀行
      a.本店がマニラ首都圏内:4億ペソ
      b.本店がマニラ首都圏外:6,400万ペソ
      ・ 地方銀行(本店の所在地による):320万~ 3,200万ペソ
       
      [小売業]
      ネガティブリストにより、払込資本金250万USドル以下の小売業に対する外国投資は禁止されています。従って、外資の場合、払込資本金は250万USドルです。その他にも、一店舗あたりの投資は83万USドル以上必要であることや、高級品もしくは贅沢品に特化した企業の場合には、一店舗あたりの払込 資本金は25万USドル以上必要になります。
      その他、業種を問わず、「払込資本金20万USドル以下の国内市場向け企業」は、ネガティブリストによって、外資の資本比率が40%以下に制限されており、最低資本金の規制が加わります。要約すると以下の3つに分類されます。
       
      外資が40% 以下の場合
      この場合、最低資本金は5,000ペソです。
       
      外資が40% 超の出資の場合
      ネガティブリストに従い、原則として250万USドルが最低資本金となりますが、以下のいずれかに該当する場合は、10万USドルが最低資本金となります。
       
      ・ 現地人を50名以上直接雇用する場合
      ・ 先端技術を有する場合
       
      輸出向けに事業を行う会社の場合
      主に輸出向けに事業を行う会社の場合、当該最低資本金規制は適用されません。輸出向けに事業を行う会社とは、以下の会社を指します。
       
      ・ 製造業で、生産量の60%以上を輸出する場合
      ・ 貿易業で、フィリピン国内での購入量の60%以上を輸出する場合
       
      ■ 土地所有規制
      ネガティブリストの規制により、外国資本 4 0%超の会社は、土地を取得することができません。そのため、工場用に土地を利用する場 合は、土地の所有者からリースを行うことになります。リース期間は最長 50 年ですが、更新することが可能です。
      また、リース以外に、フィリピン人パートナー(弁護士など)と外 資 40%以下の会社を設立して、土地を取得する方法もあります。
       
      ■ 外国為替管理規制
      フィリピンの外国為替管理制度は、フィリピン中央銀行(BSP)が管轄し、為替規制はBSPの通貨理事会(Monetary Board)の政策によって決定されます。1992年に外貨集中義務が撤廃されて、外貨の 売買がほぼ自由化されました。
      しかしながら、貿易取引対価以外の外貨取引については、中央銀行による規制が残っています。中央銀行は、「外国為替売却を一時的に停止、または制限すること」、「居住者またはフィリピンで営業する企業が取得するあらゆる外貨為替を、中央銀行が指定する銀行・代理人 に引き渡す」、という制限を課すことができます。
       
      [貿易取引]
      輸出にかかわる外貨受取は、中央銀行の定める通貨(USドルなど) で行われなければなりません。信用状に基づく取引など、一定の条件を満たす輸出入決済のための外貨交換については、中央銀行の事前承認なく商業銀行が自由に行うことができます。
       
      [資本取引]
      外国投資家が資本、または、資本から発生した配当や利益、収益金について送金を行うために、銀行を通じて外貨を購入する場合、外国投資を中央銀行に事前に登録する必要があります。登録された外国投資は、登録済外国企業の資本の本国送金または利 益の送金は、現行規則で指定された手続及びその他の条件に従って、 中央銀行に事前に承認を受けることなく、商業銀行で行うことができます。
       
      [借入]
      現地での借入
      外資40%超の会社は土地の所有が認められていないため、土地を担保にすることができません。この場合、親会社の保証を担保にすることになります。また、長期借入については、まだ整備されていないため、ペソ建で長期借入を行うことは、現状難しいようです。
       
      外貨借入
      原則として、外貨建の借入は中央銀行の許可が必要となります。将来の元利金の支払を外貨建で行う場合には、借入の実行前に中央銀行への届出が必要となります。
       
    • 優遇政策

      1987年 オムニバス投資法(共和国法226号)は、アキノ政権下の1987年に制定されました。国内外問わず、投資優先計画(IPP)に記載された投資について、投資委員会(BOI)に申請、登録すれば優遇措置の適用を受けることができます。
       
      ■ 投資優先計画に基づく業種別優遇政策
      2013年度IPPでは、次の13分野を優先投資分野として指定しており、投資優先分野に該当していれば優遇対象となります。
       
      ・ 農業及び、農業ビジネスや漁業
      ・ クリエイティブ産業・知的サービス業
      ・ 造船業
      ・ 大規模住宅建設業
      ・ エネルギー産業
      ・ インフラ業
      ・ 研究開発事業
      ・ グリーン(環境)事業
      ・ 自動車産業(電気自動車や二輪車を含む)
      ・ 観光業
      ・ 戦略的プロジェクト(フィリピン国に大きく寄与すると考えられる事業)
      ・ 病院・医療サービス業
      ・ 災害予防や修復事業
       
      また、これらの業種に該当していない場合でも、次の要件を満たした場合には同様の優遇措置を受けることができます。
       
      ■ 税制面の優遇措置
      BOIに投資申請を行い、許可を受けた場合には、以下のような税制面の優遇措置を受けることができます。
       
      ・ 法人税の免除
      a. パイオニア企業※:6年
      b. 非パイオニア企業:4年
      c. 拡張投資:3年(法人税免除は売上高の増加分についてのみに限定)
      d. 低開発地域への新規、または拡張投資(パイオニア、非パイオニアにかかわらず):6年間
      e. 近代化投資をする場合:3年間(法人税免除は売上高の増加分についてのみに限定)
      ・ 予備部品に係る関税の免除(大統領令528号)
      ・ 埠頭使用料の免除
      ・ 5年間、資本設備や予備部品に係る関税率の低減
      ・ 繁殖用の家畜・遺伝物質の免税輸入
      ・ 国産の繁殖用の家畜・遺伝物質の税額控除
      ※パイオニア企業とは、以下の要件を満たす企業をいい、それ以外の企業を非パイオニア企業といいます
      ・フィリピンにおいて商業規模で生産されたことのない財または原材料の生産に従事している企業
      ・フィリピンにおいて商品生産に実績がなく、試されたことのない新規の設計、製法または工程の利用を行っている企業
      ・石炭などの伝統的資源を利用していない、もしくは非伝統的資源の生産やそれらを利用する設備の製造に従事している企業
      ・農業輸出開発地域での営業を行っている企業
      ・ 投資優先計画(IPP)で定められた企業。最終製品がフィリピンの原材料を含み、その製品についてリスクをとり、投資できる企業
       
      ■ その他の優遇措置
      その他にも、外国人の雇用や通関手続の簡略化というように、さまざまな優遇措置があります。
       
      ・ 外国人の雇用(登録日から5年間、登録企業は統括監督者・技術者・顧問職に外国人を登用できる)
      ・ 通関手続の簡略化
      ・ 委託機器の輸入
      ・ 保税工場・保税倉庫を利用する特権
       
    • 形態別の優遇措置

      ■ 地域統括本部、地域経営統括本部に対する優遇措置
      1987年 オムニバス投資法の定めに従い、地域統括会社(RHQ:Regional Headquarters) または地域経営統括本部(ROHQ:Regional Operating Headquarters)として登録している企業は、後述のインセンティブを受けることができます。
       
      RHQは、アジア太平洋地域における支店や関連会社の監督や調整業務を行います。フィリピン国内での事業活動を源泉とした収益を計上することはできず、フィリピン国内に子会社や支店を有している場合であっても、経営に直接参加することができません。

      一方ROHQは、フィリピンまたはアジア太平洋において、他の支店、子会社に対して総務/企画、事業計画・調整、財務助言サービス、原材料及びコンポーネントの調達、販売の管理/促進、訓練/人事、物流業務、研究開発/製品開発、技術サポート/メンテナンス、データ処理・通信、事業開発といったサービスを提供する事業拠点です。RHQとは異なり、フィリピン国内での事業活動を源泉として収益を上げることができます。
       
      要件を簡略化すると次のようになります。
       
      [要件]
      ・ RHQの活動は、地域内の統括・連絡・調整センターとしての役割に限定される
      ・ ROHQは、フィリピン国内での事業活動を源泉として収益をあげることができる
      ・ RHQは、フィリピン国内の子会社や支店の経営に参加すること、あるいは、本店、支店、関連会社、子会社または他の会社に代わって商品及びサービスの販売を行うことができない
      ・ RHQを開設する多国籍企業は、フィリピン国内における活動を行うのに必要な金額を、フィリピンに送金することを義務付けられ、その最低金額は、年間5万USドルまたはこれに相当する外貨金額であることが要件である。ROHQについては、20万USドルを一括送金する必要がある
       
      主に税金面の優遇措置が与えられます。
       
      また、適用を受けたRHQ、ROHQで雇用される駐在員に対しても、個人所得税の減税、ビザ取得の便宜などの優遇措置が適用されます。
       
       
    • 特別経済区に付与される投資インセンティブ

      1995年特別経済区法(共和国法7916号)に基づき、フィリピン経済区庁( PEZA:Philippine Economic Zone Authority)は、都市部以外の特定の地域に外国投資を誘致するために輸出加工区(エコゾーン)を設置しています。輸出型製造業やサービス供給者に対して投資の促進・サポートをすることで事業運営の簡易化を図っています。
      PEZA法に基づき、特定の地域に設置された外国企業は、優遇措置を受けることができます。
       
      なお、本法が成立する前から、1987年オムニバス投資法に基づく優遇措置が付与されていますが、本法の成立により、特別経済区で事業を行う企業に対しては、既存の優遇措置に加え、以下の優遇措置が付与されます。
       
       
      ■ 優遇の内容
      優遇措置に関しては、事業の種類などによって異なります。各事業に対応する優遇措置をまとめています。
       
      [輸出製造業]… ❶
      所得税免除
      法人所得税が以下の期間に渡って100%免除されます。
      ・ 拡張プロジェクト:3年間の免除(ただし、所得税免除は、増加した部分の売上高のみに適用)
      ・ 非パイオニア企業:4年間の免除
      ・ パイオニア企業:6年間の免除
       
      パイオニア企業に該当し、かつ以下の要件を満たしている場合には、免除期間が延長されます(1つの基準で1年間の免除期間延長に相当する)。ただし、免除期間合計は8年間を超えることはできません。
      ・ 当該プロジェクトを操業してから最初の3年間の純外貨獲得高が、年間平均で50万USドル以上ある場合
      ・ 当該プロジェクトにおける労働者に対する資本設備の比率が、直近で既に申請された前年度に1万USドルを超えていない場合
      ・ 登録された製品の製造に使用されている国内産原材料の平均コストが所得税免除期間の前年度の原材料の総費用の50%以上である場合
       
      特別税の適用
      当該企業の所得税免除期間の満了をもって、5%の総所得※課税が適用されます。
      ※ 総所得とは登録活動から得られる総売上高または総収入から販売割引、返品、引当、販売値引、直接費用を差引き、課税期間中に発生する管理費・偶発的な損失を控除する前の額を指します
       
      その他
      ・ 輸入された原材料、資本設備、機械、予備部品に対する関税及び租税の免除
      ・ 埠頭税、輸出税、賦課金または手数料の免除
      ・ 内国歳入局(BIR:Bureau of Internal Revenue)とPEZA要件の遵守を条件とした現地調達における付加価値税(VAT:ValueAdded Tax)の免除
      ・ 地方政府の賦課金、手数料、免許及び課税の支払免除(ただし、所得税免除期間中の場合には以下を除き 固定資産税を支払う必要がある)
      ※ 製造、加工や産業目的のために特別経済区内で導入・運用される機械については、その運転開始から最初の3年間についての固定資産税を免除※ 不動産に帰属しない生産設備は固定資産税から免除
      ・ 拡大源泉徴収税の免除
       
      [IT サービス業]…
      所得税免除
      法人所得税が以下の期間に渡って100%免除されます。
      ・ 拡張したプロジェクト:3年間の免除(ただし、増加した部分の売上高・販売高のみに適応)
      ・ 非パイオニア企業:4年間の免除
      ・ パイオニア企業:6年間の免除
       
      パイオニア企業のプロジェクトが以下の基準に準拠している場合には免除期間が延長されます(1つの基準で1年間の免除期間延長に相当)。ただし、合計免除期間が8年間を超えてはなりません。
      ・ 当該プロジェクトを操業してから最初の3年間の純外貨獲得高が、年間平均で50万USドル以上ある場合
      ・ 当該プロジェクトにおける労働者に対する資本設備の金額が、直近で既に申請された前年度に1万USドルを超えていない場合
       
      特別税の適用
      当該企業の所得税免除期間の満了をもって、5%の総所得課税が適用されます。
       
      その他
      ・ 輸入された設備と部品に対する関税及び租税の免除
      ・ 設備の輸入貨物に対する埠頭税の免除
      ・ BIRとPEZA要件の遵守 を条件とした通信費、電力費、水道代及び建物のリース料を含んだ現地調達における物品とサービスにおける付加 価値税の免除
      ・ 地方政府の賦課金、手数料、免許及び課税の支払免除(ただし、所得税免除期間中の場合には以下を除き 固定資産税を支払う必要がある)
      ※ 製造、加工や産業目的のために特別経済区内で導入・運用され る機械については、その運転開始から最初の3年間についての 固定資産税を免除※ 不動産に帰属しない生産設備は 固定資産税から免除
      ・ 拡大源泉徴収税の免除
       
      [観光業]… ❸
      所得税免除
      投資優先計画(IPP)に基づく許可を取得した場合、所得税が4年間免除されます。
       
      特別税の適用
      当該企業の所得税免除期間の満了をもって、5%の総所得課税が適用されます。
       
      その他
      ・ 輸入された設備に対する関税及び租税の免除
      ・ 通信費、電力費、水道代及び建物を含んだ現地調達における物品とサービスにおける付加価値税の免除
      ・ 拡大源泉徴収税の免除
       
      [医療観光業]… ❹
      所得税免除
      外国人患者に対する医療サービスから得られる収入について、所得税が4年間免除されます。
       
      特別税の適用
      当該企業の所得税免除期間の満了をもって、5%の総所得課税が適用されます。
       
      その他
      ・ 輸入された医療設備と部品に対する関税及び租税の免除
      ・ 専門的な技術力と企業の登録活動の運営に必要とされる部品・機器の供給のための医療設備の輸入に対する関税及び租税の免除
      ・ 通信費、電力費、水道代及び建物を含んだ現地調達における物品とサービスにおける付加 価値税の免除
      ・ 拡大源泉徴収税の免除
       
      [農業関連業]… 
      所得税免除
      所得税が4年間免除されます。
       
      特別税の適用当該企業の所得税免除期間の満了をもって、5%の総所得課税が適用されます。
       
      その他
      ・ 輸入された生産設備・機械、種畜、設備と機械の予備部品や備品を含む農具に対する関税及び租税の免除
      ・ 輸出税、埠頭税、関税及び手数料の免除
      ・ 通信費、電力費、水道代及び建物を含んだ現地調達における物品とサービスにおける付加 価値税の免除
      ・ 市長の許可、営業許可証、職業の執行許可、健康証明書、衛生検査料及び廃棄料等の地方自治体の手数料納付の免除
       
      [運送または倉庫業]… 
      PEZA認定の輸出製造企業への販売、もしくは、PEZA認定の輸出企業への積送品や直接輸出するための梱包作業、サイズ変更、仕様変更や再販売に係る原材料、仕掛品、に対しての税金及び関税が免除されます。
      検査、梱包、外観検査、保管及び地方に供給される原材料の付加価値税が免除されます。なお、所得税免除や特別税の適用はありません。
       
      [特別経済区開発・運営業]… ❽
      特別税の適用
      製造特別経済区の開発者と運用事業者は、当該企業の所得税免除期間の満了をもって、5%の総所得課税が適用されます。
       
      ITパーク、観光特区などの開発者と運用事業者は、総所得に対して5%の特別税及び開発者の所有する土地に対する 固定資産税を除くすべての国税・地方税が免除されます。
       
      その他
      ・ 現地購入品の付加価値税の免除
      ・ 拡大源泉徴収税の免除
       
      [施設提供企業]… ❾
      特別税の適用
      総所得に対して5%の特別税及び開発者の所有する土地に対する固定資産税を除くすべての国税及び地方税が免除されます。
       
      その他
      ・ 現地購入品の付加価値税の免除
      ・ 拡大源泉徴収税の免除

      [特別経済区公共事業企業]… 
      特別税の適用
      総所得に対して5%の特別税及び開発者の所有する土地に対する 固定資産税を除くすべての国税及び地方税が免除されます。
       
      その他
      ・ 現地購入品の付加価値税の免除
      ・ 拡大源泉徴収税の免除
       
    • 地域の特徴

      国内には、フィリピン経済区庁(PEZA)というフ ィリピンの政府機関が運営母体となった輸出加工区、民間運営の団地を含め、主要な工業団地が多く存在し、既に50件以上の工業団地があり、建設中の工業団地を含めると100件以上あります。いずれの工業団地も空港、港湾からのアクセスが容易であり、また、近年では日本以外のアジア圏との貿易も年々拡大しており、今後工業団地はますます増加すると考えられています。
      フィリピンのエコノミックゾーン(経済区)と呼ばれている工業団地に進出している外国企業の約6割が日系企業であり、現在約630社の日系企業が経済区内で活動しています。とりわけカラバルゾン(マニラ南部のカビテ州、ラグナ州、バタンガス州、リサール州、ケソン州)地区への進出が目立っています。
       
       
      工業団地には、「経済区庁により開発・運営される輸出加工区」、「国家住宅公団により開発・運営される工業団地」、「民間により開発・運営される工業団地」などがあり、政府は、貿易工業省主導で輸出加工区を中心とした工業団地整備に力を入れています。

      ■ 日系企業が進出している主な工業団地
      [ファーストフィリピン工業団地]
      バタンガス州サントトマス市及びタナウナン市に股がる地域に位置し、総開発面積が448haです。入居企業数が約93社(うち日系企業が57社)です。
      ASEAN各国で工業団地を展開する住友商事海外工業団地がフィリピンの有力財閥ロペスグループと共同で開発し、マニラ中心部から52km、高速道路で約50分のところにあります。各種インフラはもちろん、貸工場、和食レストラン、屋内スポーツ施設、物流センターなどの施設も充実し、更に日本人2名が常駐し管理をしています。
      また、すぐに操業可能な貸工場、事務所などの提供も行っています。富士通、住友ベークライト、本田技研工業などが入居しており、主要な自動車・二輪メーカーや電機メーカーが60分圏内に集積しています。また、世界最大のたばこメーカー、フィリップ・モリスが進出し、世界最大規模ともいわれる煙草生産拠点を作ることで話題になっています。
      2013年には、村田製作所、キヤノン、ブラザー工業の大手3社が操業を開始しています。
       
      [ラグナテクノパーク]
      首都マニラ中心地から南へ45kmに位置し、高速道路で約1時間の場所に立地しています。
      フィリピンの大手財閥アヤラ・グループ、三菱商事などの合弁で開発し、マニラ中心部から44kmです。120社を超える企業の製造工場が隣接し、周辺にはショッピングセンターや高級住宅地が立ち並んでいます。日立製作所、東芝、NECなどのコンピュータ会社が多数進出しています。また、本田技研工業、いすゞ自動車などが入居しています。

      [クラーク経済特別区]
      マニラの北約80kmに位置し、高速道路で約1時間、フィリピンのルソン島パンパンガ州にあるアンヘレスに隣接しています。1991年に米軍クラーク空軍基地が返還された後、フィリピン政府が引継ぎ、1993年に政府直轄の経済特別区と指定され、軽工業、リゾート、カジノ、国際会議場などがあります。
      クラークの約半分のエリアが国際空港であり、韓国などから直行の定期便が飛んでいます。プールやゴルフコースまで歩いていけるなど、住環境も整っており、クラーク開発公社(CDC:ClarkDevelopment Corporation)の管理のもとで、治安も良いことで有名です。更に、数々のレストランやホテルがあり、免税店では日用品の購入も可能です。
      日系の大手では横浜タイヤの工場が有名であり、他にも中小企業が複数進出しています。
       
      [リマ工業団地]
      フィリピン政府が重点工業地域と指定しているカラバルゾンエリアのマニラ首都圏バタンガス州に位置し、マニラ中心部から約65km、高速道路で約70分。丸紅と現地アルカンタラグループの中核企業であるアルソンズランド社の合弁企業であるリマランド社により開発され、工業用水、電気の安定供給、セキュリティ面での管理も行われています。
      リマシティホテルが操業中であり、現在戸建住宅を開発中であり、商業地域の開発計画もあります。セイコーエプソン、日立電線、ヤマハ発動機などが進出済です。