シンガポール

1 章 地域統括拠点による マネジメントの 重要性

    • Latest News & Updates

       【2016年Q2のGDP成長率】
      シンガポールQ2GDP成長率が2.1%と発表されました。6月時点では2.0%の成長が見込まれていましたが、ほぼ予想通りの結果となりました。
      2016年を通じての成長率は1.8%と見込まれており、Q2終了時点においてもこの予測は変更されておりません。
       
       6月時の調査から一定の変動があったセクターは下記の通りです。
      Manufacturing 0.0(6)0.7(Q2)
      Finance & Insurance 2.9(6)2.0(Q2)
      Private Consumption 2.5(6)3.0(Q2)
       
       個人消費の項目において増加が見受けられますが、Q3にかけてはこれが著しく減少し、Q4において再び増加することが予測されます。

       

      【シンガポールの経済成長について】
      Trade and Industry (Trade) Minister Lim Hng Kiangは国会にて、大きな後退の見込みはないとはいえ、シンガポール経済が今後の四半期期間中、マイナス成長となる可能性があると伝えました。
       
      直近の経済データから見られる数字の悪化から、経済後退が迫っているのではないかという懸念に対し、Mr.Limは「我々の基準となる予測では、大きい経済後退では無いが、四半期ベースでマイナス成長となる可能性を排除することはできない」と述べています。
       
      上半期に比べると、下半期におけるGDP成長率が2.1%ほどに落ちるとみられています。
       
      Mr.Limは国際経済の成長に連れ、政府は継続して状況をよくモニタリングし、経済の後退に対して対策に努めると述べています。
       
      業績悪化を受けている企業が援助を求められるSME Working Capital Loan Schemeのような制度と共に、政府による支援も検討されており、企業としては今後のシンガポール政府の企業支援に注視する必要があります。
       
      Mr Limはシンガポールを“小さい開放的な経済”であると説明しながら、それはシンガポールが2008年度経済危機など、外部的な要素に影響されざる終えない状況と、経済の減退を示唆しています。
      短期的には、世界経済の減退は先進国の不振、中国の成長の衰え、オイルの値下げにより続くと見られています。また、6月に行われたUKの脱EU投票はグローバル成長に不確実性を凋ませています。
       
      Mr. Limはグローバル経済の逆風の影響で、Finance and Insuranceや卸売りなど、外部志向の業界は停滞しており、これらが引き続き逆風の影響を受ける可能性があります。製造業においても、この2四半期の成長にも関わらず、外需の不振により業績が悪化しつつあります。Marine and Offshore Engineering業界やPrecision Engineeringなどに所属している業界はオイルの値下げによる不振が続くと見られており、内需志向のFood ServicesReal Estate業界は現状を維持する状態になるとみられています。
       
      但し、観光客の数が増加するにつれ、観光業界は前向きな影響を受けています。Education, Health and Social Services, ITInformation Services業界の成長に基づき、Information and Communication業界などのその他の業界においては成長に弾力を受けることになるでしょう。
       
      今後、グローバル経済の衰退にあっても、「生産性や革新によるもっと継続性のある成長のため努力を努める事」が重要となってきます。。
       
      MTIによる3四半期の先進国のGDP予想を10148時に発表される予定であり、11月の成長予報があり、今後の経済動向に注目が集まっています。また、1014日はMASによるMonetary Policy Decisionの発表もある予定です。
    • アジアに進出する日本企業

      勃興するアジアの巨大マーケット
      近年、アジア経済の急速な発展に伴い、アジア各国で中間層が急激 に増加しています。中間層による消費も著しく伸びており、今後も堅調な経済発展を見せることが予測されます。
      自動車産業を見てもわかるとおり、2 0 0 0 年代に入り日欧から BRICSへ、さらに現在はタイとインドネシアを中心としたアジアに市場が変化しています。また、現在中国・インドの両方を含むアジアの人口は約 4 0 億人となっており、世界人口の約 6 割を占めるなど、成長著しいアジア市場が外国企業から注目されています。

      日本国内の市場が衰退していく中、日本企業はアジア市場へ活路を 見出しています。特に、サブプライムローン問題をきっかけにした 2 0 0 8 年の世界金融危機以降、ヨーロッパを中心に各国の経済不況が 連鎖的に広がり、欧米諸国の需要が落ち込んでいます。そのため、日本企業は高い成長率や需要の伸びが見込まれているアジア諸国への供給を増やし、急速に製造および販売の中心をアジア市場にシフトしているのです。

      アジアの日本企業数
      外務省の「海外在留邦人数調査統計 平成 27 年要約版」によると、 現地法人日本企業数 6 万 8,573 社のうちアジア諸国の企業数は 4 万 8,203 社(70.29%)と圧倒的に多い結果となっています。
       
      アジア諸国の日本企業数を国別で見てみると、中国(3 万 2,667社)がアジア全体の約68%を占めており、圧倒的に多くなっていますが、年々比率が下がっている傾向にあります。 中国以外では、インド、インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム、台湾が 1,000 社以上となっています。
       
      中国は 約14 億人を超える人口を有し、かつ所得水準も急速に向上しています。かつては製造拠点としてのマーケットとして見られてい ましたが、2 0 0 0 年代以降は製造拠点としてだけではなく、販売拠点としての進出も増加しており、世界のマーケットと称されるようにな りました。
      その他の国の日本企業数の推移を見てみると、中国に次いで巨大マ ーケットであるインドの企業数が目立っていますが、アジア諸国全般で企業数が増加しており、日本企業のアジア諸国への進出が加速していることがわかります。
      特に、製造拠点としては、タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアへの進出が増加しており、1 つの会社がアジア諸国の1 つの国だ けではなく、複数の国に進出を加速していると思われます。
       

    • 日本企業のアジア市場重視

      日本企業は、アジア諸国各地に拠点を設けており、今後もますますその重要性が高まることが予想されます。
      JETROの「2 0 1 5 年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」  (2016年3月)によると、今後(3 年程度)の海外での事 業展開(新規投資、既存拠点の拡充)について、53.3%の企業が「事業規模の拡大を図る」と回答しています。大企業では63.8%、中小企業では50.5%が海外の事業展開に積極的なため、今後も引き続き、中小企業のアジア諸国への進出が増加すると考えられます。
       
      海外で「事業規模の拡大を図る」と回答した企業のうち、具体的に拡大を図る機能については、「販売機能」が 83.9% で最も割合が高く、次いで「生産(汎用品)」が 33.7% となっています。このことから、今後もアジア諸国の成長と需要の伸びは大きいと考えられます。そのため、アジア市場を重視した販売戦略と特に汎用品 の生産は、日本より労働力が安価であるアジア諸国に移管するなど、全体的な経営戦略を考えることがますます重要となってきています。
    • 増加する地域統括拠点

      販売拠点と生産拠点をアジア諸国へと拡大するためには、アジア市場のニーズに合わせた戦略を迅速に立案・実行することが重要です。そのためには、日本の本社で統括して行うより、アジア地域を統括す る拠点をアジア諸国に設けて、より迅速な経営判断をすることが必要になってきます。

      アジア拠点が持つ機能
      アジア諸国に進出した日本企業の機能を考える際、JETROの「2 0 1 5 年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査結果概要」によると、販売拠点が 7 5.6%、生産拠点が 5 6.1% となっています。
      現在、アジア諸国は経済成長率の持続により「中間層」が育ち、購買意欲が向上しています。今後は「中間層」から「富裕層」へと成長 し、日本の所得水準までになると期待できるので、その「富裕層」を 取り込むことにより、伸び悩む日本の市場を補完できる可能性は、十分に期待できます。
      中国の台頭により、価格競争は激化しているので、人件費の高い日本では生産コストの低減を図ることは困難となり、より低い労働コス トのアジア諸国に生産拠点を移さざるを得ない状況です。
      2 0 1 3 ~ 2 0 15 年の拠点機能別の推移を見ると、販売拠点と生産拠点はほぼ横ばいです。しかし、全体の数は少ないものの、地域統括拠点と研究開発拠点は、増加傾向にあります。
       
      この結果から、高い成長率が見込めるアジア市場に活路を見出そう としていること、低い労働力を活用して生産コストの低減を図っていることがわかります。地域統括拠点については、今後も成長が見込まれるアジア市場の販売戦略強化を図るために設置している企業が増えていると考えられます。研究開発拠点については、日本より人件費が低くて優秀な人材を確保することにより、研究開発費の削減を図っている企業が増加しているのではないかと考えられます。
      アジア諸国に進出した日本企業のうち地域統括機能を有している企業は、全体の18.1% を占めており、過年度より増加しています。

      アジア諸国の中でも、地域統括会社を設立することで優遇税制などのインセンティブを受けることができる制度や、周辺国へのアクセスが良いなどの利点を活かすことのできる国として、特に統括拠点に多く選定されるのがシンガポールと香港です。
       
      シンガポールについては、JETRO「第 4回在シンガポール日系企業の地域統括機能に関するアンケート調査」(2015年12月)による と、有効回答数 185社中、48.6% に当たる 90 社が「地域統括機能を有している」と回答し、  「地域統括機能はないが、将来設置すること を検討している」と回答した企業が 28.1% に当たる 5 2 社でした。つまり、将来的には在シンガポール日系企業のうち、実 に7割超 の企業がシンガポールに地域統括機能を有すると考えられます。
       
      香港統計局によると 2 0 1 2 6 月現在、在香港の地域統括拠点数は 1,3 6 7 社と発表されており、堅実に増加しています。一方で、在香港の日本企業の地域統括拠点数は 2 1 9 社となっており、年々減少していますが、減少している今だからこそ狙い時です。
       
       
       

       

       

       
    • 国内再編成から国際再編成へ

      日本における海外直接投資は、1 9 5 1 年に商社の米国法人設立を許可したことが始まりでした。その後、段階的な自由化措置、外為法改正、プラザ合意による急激な円高を契機に拡大してきました。
      1 9 7 0 年代の海外に対しての日本企業のビジネスは製品輸出が中心であり、国内で生産された製品の国際競争力が主要な関心事でした。 その後、海外への進出が盛んになると、輸出ビジネスから一転、日本から人を派遣して現地で従業員を雇用し、原材料等を調達して生産活動・販売活動等を展開するという、本社機能の現地化が行われるようになってきました。
      このように、企業の事業活動がグローバル化することにより、企業構造が複雑化し、企業全体の実態把握が困難になってきました。従来の本社重視の経営戦略から、企業グループ全体を見据えた経営戦略に転換せざるを得なくなってきたため、海外事業拠点の資金調達、租税 戦略、為替リスク管理などをグループ全体の視野から一元管理する必要性が求められています
      また、国内経営から国際経営への変化が求められる中、全体の事業 の効率化を図るために、ホールディング・カンパニー(持株会社)に よる国際再編成の必要性が高まっています。
      戦前の日本におけるホールディング・カンパニーは、三菱、住友な ど財閥系の会社が金融などの基幹産業を直接支配し、政治にも大きな影響力を及ぼしていました。このため、戦後は戦前の財閥復活を防ぐため、独占禁止法第 9 条で、ホールディング・カンパニーの設立が禁止されていました。
      しかし、企業の競争が激しくなると、事業の効率化や活性化が必要になります。そこで、事業リスクの分散と企業の合併・買収(M&A による業界再編を円滑に行うために、1 9 9 7 年に独禁法が改正され、ホールディング・カンパニーの設立が解禁されました。 まず、銀行や証券などの金融機関の、事業区分の垣根を越えた再編が加速し、さまざまな事業を営む商社への導入も本格化していきまし た。それに伴い、グループ内で税負担を軽減できるような新たな納税 制度が導入されました。
      従来は、国内の事業の再編成に活用されていたホールディング・カ ンパニー制度ですが、海外への進出が盛んになると海外拠点の数も増 加し、企業活動がグローバル化され、海外子会社も含めた事業の効率化や活性化を目的とした、国際事業の再編成が求められています。
      ホールディング・カンパニー制度のメリット・デメリットについては、下記のとおりです。
       
      海外拠点が北米、欧州、アジアなどへと地域が拡大していくに伴い、地域ごとに事業を統括させるための地域統括会社としてのホールディング・カンパニーを設立して、国際競争力を高める必要性が高ま っています。経営管理の観点から、グローバル経営での低コスト化や生産プロセスの分散メリットを活かす「世界全体最適」と、地域市場に合った商品やマーケティング戦略を実施する「地域最適」の両輪が必要になってきます。
      そこで分散する生産拠点・市場の情報を地域ごとに集中管理し、各地域市場の動きを迅速に把握して意思決定することにより、在庫リスクや取引リスク等の回避が可能となります。
      各国・地域のグループ企業を管理し、各地域での事業戦略を立案するホールディング・カンパニーである地域統括会社の役割が以前にも増して重要になっています。
      野村総合研究所の「グローバル本社機能のあり方に関するアンケー ト調査」では、海外売上比率が 3 0% 以上になると、地域統括機能の必要性が飛躍的に高まる結果となっています。
       

       

      このように、企業の海外拠点の再編・集約化の潮流が加速したことにより、各地域のモノ・カネ・情報を地域統括拠点に集約し、そこか ら地域内向けの再投資・融資を図る体制を構築するための財務・金融戦略も本格化しています。
    • 地域統括会社によるマネジメント

      アジア市場の地域統括体制の確立の重要性を述べましたが、実際にシンガポールに地域統括拠点を設置している企業の設置目的を調べてみる3回在シンガポール日系企業の地域統括機能に関するンケート調査」報告書で「経営統制を強化、迅速な意思決定、市場ニーズに即した経営を行うため」と回答した企業71.4%域内のグループ企業に対して経営支援機能(シェアードサービス)を提供し、地域内グループ企業全体で効率化・コスト削減を図るため」 70.1% を占めています。
      アジア地域の統括形態としては、日本の本社からマネジメントする本社直轄とアジア地域の現場からマネジメントする地域統括の2つに分けられます。
      本社直轄の利点は、グローバルな視点での事業管理が可能、本社経営資源(特に人材)が活用しやすいことであり、課題としては現場の状況が的確に把握できない、市場ニーズへのタイムリーな対応が難しいといったことが挙げられます。
      地域統括の利点は、アジア市場での事業の強化、タイムリーな市場対応、各国現地法人に分散された機能の集約によるコスト削減であり、課題としては管理コストの上昇(本社から駐在する人員のコスト、人材不足(特に、現地マネジメント人材)が挙げられます。
      地域統括の形態の組織体としては、下記のように分類されます。

       

       
      アジア市場重視戦略に最適な統括形態は、各社のアジア事業のビジネスモデルによって異なると考えられます。
      下記2点の度合いが高い事業は、地域統括のマネジメントにより、アジア事業の強化、迅速な意思決定、タイムリーな市場対応の実現が可能になると考えられます。
       
        アジア市場をターゲットとして商品またはサービスをカスタマイズする必要性
        アジア地域内でのサプライチェーンの完結度合
       
      一方、その度合いが低い事業としては、設備投資額が大きく、グローバルに生産分業を行っているケースや、半導体のようにアジア地域に生産拠点はあるものの、商品がグローバルスタンダード化して、ア ジア市場向けにカスタマイズする必要がないといったケースが考えられます。
      この場合は、アジアの地域軸でのマネジメントではなく、本社直轄で事業軸を中心としたグローバルなマネジメントをすることが有効だと考えられます。
      ビジネスモデルの他に、アジア事業の規模や業種によりアジア地域統括機能が異なると考えられます。アジア事業の売上高が一定規模であれば、事業管理や営業・販売マーケティングなど事業に直結する機能を果たすケースが多いのが特徴です。
      事業規模が大きくなると、事業に直結する機能は各国の現地法人に委譲され、人事管理やコンプライアンスや内部統制などのコーポレー ト機能が強化される傾向にあります。
      製造業の場合、欧米市場向けの輸出生産拠点としての生産の最適化を適時サポートする機能や、アジア市場向け売上が増加するにつれての販売マーケティングを中心とした事業統括機能が強化されます。その後、事業統括機能は各国の現地法人に委譲され、日本の本社機能であったコーポレート機能が移行するパターンが見られます。
       アジア市場の拡大に伴い、地域統括機能が本社化し、よりタイムリーかつ迅速な市場対応が可能な体制へ移行すると考えられます。

       

       

      サービス業の場合は製造業と異なり、市場開拓のための販売マーケティング機能から始まります。サービスを提供する人材が競争の中心となるので、現地人材の活用が地域統括機能として重要になります。  シンガポールの地域統括拠点が提供している機能は、「販売・マーケティング」が 63.3%、 「金融・財務・為替・経理」が 60.0%、「経営企画」が 54.4% であり、アジア事業の強化、迅速な意思決定、タイムリーな市場対応の実現を図っていることがわかります。「経営企画」は前回調査時よりも上昇しており、一方で、前回2番目に比率の高かった「人事・労務管理・人材育成」が67.5%から46.7%に下落しています。
    • 地域統括拠点の課題

      アジア市場の成長を取り込むためにも、現地人材の登用、現地密着型マーケティング、現地への権限委譲、現地部品素材調達の徹底、現地での製品開発など、一層の現地化が必要となっています。
      ただし、地域統括によるマネジメントには以下のような課題が挙げられます。
       
      人材不足
      権限委譲が限定的
      被統括会社が合弁会社である

       

       つまり、グローバル人材の不足が原因で、現場への権限委譲が限定的になり、自社資源ではなく他社資源という合弁会社等に頼らざるを得ないことも考えられます。地域統括マネジメントにシフトするだけのグローバル人材がいないために、本社直轄で、本社の経営資源を活用する企業も多いのが現実です。
       シンガポールに地域統括拠点を有している企業が「地域統括機能の効果を最大化するために自社内で解決すべき課題」とし「人 体制の強化」が 5 9.7%「日本本社からの意思決定権限の委譲」48.1%「地域統括会社の持株機能の強化などグループ企業の組織系の見直し」が 4 0.3% を占めており、人材不足や権限委譲の強化が課題として浮彫りになっています。
       
      シンガポールに地域統括拠点を有している企業が以下の項目等を懸念点として挙げています。
      ・人件費の上昇
      ・オフィス賃料、駐在員コストの上昇
      ・就労ビザ発給の厳格化

      その他には、本社からの権限移譲が進まないなどの、本社と協力した地域統括会社の確立が問題点として挙がっております。その中でも、就労ビザの発給は近年厳しくなっており、日本人駐在員の増員が進まず、事業計画段階で考えていた適切な人材配置が行えない問題が深刻化しています。
       
       

       
    • 地域統括拠点の設置国

      アジア地域の統括拠点先を選定するポイントとしては、以下の条件が挙げられます。
      周辺国へのアクセス
      行政・法制度の透明性
      整備されたインフラ等
       
      これらの観点から、統括拠点先として、シンガポール・香港・タイが注目されています。
      「第3回在シンガポール日系企業の地域統括機能に関するアンケート 調査」で「地域内のグループ企業に対し、持株機、金融面の統括機能、販売・生産・物流・調達・研究開発・人事・法務などの各種の事業統括/経営支援(シェアードサービスの提供)を行う機能」と定義した地域統括機能を持つと回答した日系企業の割合は、36.2% となっています。
      香港統計局によると香港の日本企業以外も含めた地域統括拠点は、2 0 1 2 6 月現在 1,3 6 7 社あると発表されており、前年の 1,3 4 0 から 2 7 社も増加しています。世界経済の減速による事業環境の悪化が深刻な状況下にもかかわらず、香港の重要性は衰えていないことがわかります。
       
      日本企業が統括拠点として、シンガポールや香港を選定する理由は、各種手続の簡素化や金融取引自由化等のビジネス上の規制緩和の徹底や法人税をはじめとする税務コストの引下げ、各種免税・減税スキームなど、外国企業を誘致し、つなぎとめるための政策を怠らないことにあると考えられます。
       
       世界銀行と国際金融公社が毎年発表する、「ビジネス環境の現状2013」によれば、総合ランキングにおいて、シンガポールは 1 位(10年連続)で香港は5位という結果になっています。
      評価基準となる項目の中では、両国ともに「国際貿易」や「建設・ 設置許可」「投資家保護」「融資へのアクセス」「租税」など、アジア 地域統括拠点の立地に際して極めて重要となる項目において、いずれも 5 位以内の高い評価を受けています。シンガポールを筆頭に東アジア・大洋州地域では4カ国が世界のトップ5に入っています。
       

      現状において、アジア統括拠点の設置場所として、シンガポールと香港の優位性が群を抜いていると考えられますが、最近、タイに地域 統括拠点を設置する日本企業も増加しています。
      シンガポールに地域統括機能を有していて、他国へ統括機能の移転 を検討している企業が移転先として考えている国は、タイが一番多い という結果が出ています。 
       
       
      近年、タイでは地域統括事業を誘致するために、税制面で優遇措置 を提供するなどの法整備が進められてきました。地理的にもタイはインドシナへの玄関口と呼ばれ、マレーシア、ラオス、カンボジア、ミャンマーに隣接しています。このように、ASEAN諸国のハブとして脚光を浴びています。
      日本企業にとっては、ビジネス形態に応じて、地域統括拠点の設置 国について選択の幅が広がっているといえます。したがって製造業の 中には、タイに生産を中心とした事業統括機能、シンガポールには金融・財務や人事・コンプライアンスなどの業務統括機能を置くなど、 設置国の特性に応じて統括機能を分けているケースもあります。  
       
      シンガポール
      アジア諸国において戦略的に優位な位置にあり、卓越したインフラ を備えるシンガポールは、金融・地域貿易の中心地であり、世界で最も多忙な港を持つ、魅力ある経営拠点として広く認識されています。 シンガポールの事業所が統括している対象地域を見ると、ASEAN 9 7.4%と圧倒的に多く、次いでインド・南西アジアが 5 4.5% となっています。つまり、ASEANインド地域を統括しているケースが多いと思われます。
       
      シンガポールにおける地域統括拠点の機能は、主に以下の3点があります(P. 26 のグラフを参照してください
       
      販売・マーケティング
       経営・企画
      金融・財務・為替
       
      これらの機能によって、国際レベルの事業施設と効率的な労働力を持つことができるので、サプライチェーン管理、戦略的計画設定、ビジネス開発、人的資源管理、トレーニング、技術サポート、マーケテ ィングおよび研究開発等が行われています。
      多国籍企業における地域統括拠点は、資金利用の可能性、良好な知 的所有権保護と相まって、ハイテクの新興企業にとって活気ある拠点となっています。多くの技術系企業は、当該事業を国際化するために、資本、顧客、ビジネスパートナーを求めてシンガポールに拠点を 移しています。
       
      「第 4回在シンガポール日系企業の地域統括機能に関するアンケート調査」によると、シンガポールに地域統括機能を設置する理由として、「周辺地域へのアクセスが容易な立地にあるため」が 9 1.1% と圧倒的に多く、アジア諸国に対する地理的優位性があることがわかります。 
       
       
      したがって、シンガポールに地域統括拠点を設置する魅力は以下の 3 つと考えられます。
       
       周辺国(アジア諸国)へのアクセスが容易である(空港の利便性や港湾設備などのインフラ整備を含む)
       各種ビジネス環境の整備(政治的安定、優遇税制、賄賂に対する厳格な規定など)
      優秀な人材の確保
       
       
       
      香港
      香港は、シンガポールと同じく卓越したビジネスインフラを備えており、特に金融の中心地として魅力ある経営拠点と評価されています。
      香港が統括している対象地域を見ると、香港日本人商工会議所の2 0 0 7 年度香港・中国の事業環境に関するアンケート調査」によると「香港と一部の中国」が 4 1% と一番多くなっています。それ以外の地域で「香港のみ」 1 9%「香港とアジアの一部」 1 8% なっており、シンガポールASEAN、インドの地域を統括しているのに対し、香港は中国本土を統括しており、管轄地域が異なることが 考えられます。 
       
      香港は今やロンドンやニューヨークと並ぶ世界三大金融センターと 評されており、世界屈指のグローバル都市としてその重要性を増して います。ウォールストリートジャーナルが発表した「2 0 1 3 年経済自由度指数」によると 1 9 年連続で「世界で最も自由な経済体」に選出されました。
      もともと香港は、イギリスによる植民地時代にイギリスの対中国貿易の拠点であったことから、輸入したものをそのまま輸出する中継貿易が発達していました。1 9 9 7 年に中国に主権移譲されたものの、2 0 4 7 年までは「香港特別行政区」として、社会主義国である中国の中で、一国二制度となる資本主義システムが継続して採用されること になっています。
      1 9 4 9 年に、中華人民共和国が成立すると、中国大陸から香港へ人口が大量に流入し、その結果1950 年までに、人口が約4倍にまで膨 れ上がるという事態になりましたが、それを安価な労働力として活用することで、繊維産業やプラスチック工業などの労働集約型工業が発達し、危機を脱出しました。
      1 9 7 0 年代後半になると、香港の工業は、繊維工業中心からエレクトロニクス産業や精密機械など、高付加価値製品の製造中心へと移行 していきました。こうした産業の転換とともに、香港政庁が住宅団地開発や交通インフラ整備などに着手し、香港経済は、急速な発展を遂げました。
      そして中国の改革開放政策により、1 9 8 0 年代からは従来の製造業は広東省をはじめとする珠江デルタへと移転し、香港は中国南部や東南アジアにおける金融センター、物流センターへと転換し、国際市場 における競争力を強化していきました。
      1 9 9 7 年の中国返還後もイギリスの法体系に基づく「香港特別行政 区基本法」が現在も維持されています。また、低税率や優遇税制の経 済体制であり、高い教育水準と英語能力を有する人材が多いことから、アジア市場の本社機能を設置する欧米企業が多く存在します。
      また物流インフラに関しても、2 0 1 0 年のコンテナ取扱量は上海、シンガポールに次いで世界第 3 位、航空運輸の取扱貨物量は世界第 1位であり、ハブポート、ゲートポートとしての重要性は非常に高いです。
      中国の対外開放と 1997 年の返還後は、両者の関係は飛躍的に発展 しています。2 0 0 3 年には経済貿易緊密化協定(CEPAが中国本土香港の間で調印され、その後も補充協議が実施・締結されています。
      CEPAにより中国本土との貿易シェアも拡大しており、中国華南地区のビジネスセンターとしての機能が重要となってきています。
       
       タイ
      タイは、東南アジアの生産拠点として著しい発展を遂げてきました。1 9 9 7 7 2 イ発 の「 1 9 9 7 1 9 9 8 年)に見舞われるなどの試練も経験しましたが、見事に立ち直り、以後は堅実な経済成長を続けています。日本企業の進出も著しく、2012 年にはバンコク日本人商工会議所の登録会員数が 1,371 社になっています。
      タイ政府は、外国企業を誘致するため、税制面も含めてさまざまな 施策を推し進めていま「東洋のデトロイト」として自動車産業の育成には特に注力しており、意欲的な育成策がとられています。
      タイに拠点を置くメリットは、安価な労働力を活用することが一般的でした。しかし、最近は労働賃金が上昇しているため、安価な労働力は必ずしも魅力ということではなくなりましたが、他の低水準賃金の国にはない技術力の高い労働力、裾野の広い下請企業の集積、電力不足や水不足の苦情がないインフラ整備、第三国への輸出拠点となる スムーズな物流といった、製造業の事業活動に欠かせないメリットが あります。そのため、2 0 1 1 年のタイ洪水で被害を受けたにもかかわらず、タイ投資委員会(BOIによると 2 0 1 2 年の日本企業によるタイへの直接投資件数(認可ベース)は、前年比 5 7.2% 増の 7 6 1 件となりました。
      タイ政府の投資優遇政策も、モノづくり中心から、情報通信やエネルギー、ファッション、さらにはエンタテイメントやヘルスケア産業 まで、幅広い分野の産業育成を目指しているため、今後は製造業以外の産業への進出も期待できます。